先週のBlog記事において、「中国のインターネットはフィルタリングが徹底的に」と銘打ち、中国のフィルタリング事情を解説していました。
→ 4/22の記事「中国のインターネットはフィルタリングが徹底的に」
そのほかのサイトでも、いろいろと紹介されているようですが、先日の4/22に上海からの帰国前に少々時間があったため、検索などの実験してみたのですが、その結果まとめてみました。
まず、中国共産党がもっとも神経を尖らせているもののひとつ「中国労働党」について検索を行う実験をしました。右の画面は、労働党の中国での表記である「工人党」を Google検索したものです。
見た限りでは、特に制限を行われていることも無く、通常通り表示がされています。
先ほどの場合は、ただの労働党だけだったので、世界各国の労働党が出てしまいましたが、今度は「中国工人党」という文字列で検索を行ってみました。
すると、やはり問題なく表示されます。
ただし、先ほどと異なるのは、なにやら怪しそうな中国政府に不利益をもたらしそうなfreechinaなるURLが、検索結果に見えてきました。こんなものを中国政府は容認するのかいと思いつつも、問題なくリスティングされています。
そこで、実際の内容を覗くべく、Googleのキャッシュを覗いてみることに。
・・・
すると、なんということでしょう!ページが表示されないではありませんか。
中国に持っていっていたのがノートパソコンであり、実際にどのようなパケットが返されたのか分からず、大変残念な思いをしたのですが、とりあえず、表示されないことだけは確かなようです。
ちなみに、VPNで会社に接続して確認したところでは、問題なくキャッシュが表示されます。
日本の皆さんも大丈夫かと思います。→Google検索
次に、最初検索した「工人党」を再び検索します。
すると、なぜか出てこなくなりました・・・。
おまけに、「共産党」と検索しても表示されません。そのほかの日本語キーワードまでが検索できなくなってしまいました。
HTTPアナライザがあれば詳細が分かったのですが、タコのMSIEなのでエラーがまったく分からないのが残念です。
しかし、トップページは表示されるのに、全ての検索ができないとは変です。
なぜだろうと思い「フィルタを行っている機器はL3〜L7に対応したスイッチ式のセッションでの判別をするタイプではないか」と仮定し、ブラウザを再起動することにしました。
セッション管理の場合には、既に開通しているセッションについては制限が掛からず、新規のセッション(新しい接続)に対してのみ制限が掛かるということにも説明がつきますし、MSIEのキープアライブタイムアウトを考えると無い話ではありません。
そこで、ブラウザをいったん終了し立ち上げなおしてみました。
私のMSIEは、ホームをGoogleにしているのですが、見事なまでにエラーとなってしまいました。
やはり先ほどの仮定は正しいようです。私のIPアドレスからは、Googleを使えなくなってしまいました。
ちなみに、VPNで会社に接続すると、Googleはちゃんと表示されています。
しかし、本当にこんなことがあるのかと不思議なくらいですが、Google以外の日本における有名サイトといえるであろう、アサヒコムにおいても同じ現象が確認されました。
まずは、先ほどと同様に「工人党」で検索を行うわけですが、特に問題なく表示されています。
シンガポールには、工人党があるそうで。
しかし、「中国工人党」と検索すると、結局見ることはできなくなってしまいました。
驚くべきことに、日本語のサイトでさえ、このような結果となってしまうようです。
なお、先ほどと同様にブラウザを再起動してアサヒコムを表示してみましたが、特に問題ありません。
これには理由があります。Googleの場合は検索もトップページも同一のIPアドレスでサーブしていますが、アサヒコムはサーチ用のサーバを分離しているようです。なので、違うIPアドレスとなることからブロックを免れたものと思われます。
そこで、「ドラえもん」と、日本国内でももっとも害の少ないキーワードのひとつを検索してみることにしました。検索入力フォームは、www.asahi.comなのでまだ問題ありませんが、search.asahi.comはどうなるでしょうか。
ここまで読み進めていただけた方にはお分かりのとおり、やはり表示されませんでした。
これは「ドラえもん」が有害キーワードなわけではなくて、既に私のIPアドレスからは、search.asahi.comへブロックされてしまったためです。
しかし、サイトを特定して制限を行っているわけではなくて、送信する文字列や受信する文字列に含まれていた場合に、制限が開始されるのではないかと思われる方もおられるでしょう。
私もそう思い、検索サイトで無いところでクエリ文字列を発生させる実験をして見ました。
まずは、「中国工人党」をUTF-8でURLエンコードした文字列を付与し、 http://www.asahi.com/index.html?query=%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%B7%A5%E4%BA%BA%E5%85%9A というURLを表示してみましたが、問題ありません。その後、EUCでも試しましたが問題ありません。
このことから、送信した文字列を一律に制限しているということはなさそうです。
それならばと、返ってくる文字列に含まれていればどうかということで実験をしてみました。
しかしながら、何回リロードしてもまったく問題なく表示されます。
これらのことから、一律にトラフィックを制限するというよりは、注目すべきIPを登録してあり、そこのキーワードを即座に厳しく制限するというのが手法のようです。
もちろん、それ以外のサイトでも、キーワードなどがマッチすれば手動で登録され、都市伝説的に語られる「中国でエロサイト見たら、翌日は制限されてた」ということにつながるのではないでしょうか。
なお、今回はHTTPで実験をしたわけですが、ブロックされてもPINGは返って来る事から、L3よりも高いレイヤーで制限をしているようです。
果たして、今後もスケールしていくのかどうかは分かりませんが、一党独裁の国でもあるので、検閲コストは国民のインターネット料に転嫁しながら、ブロードバンド化を進めていくのでしょう。
皆さんも、中国でインターネットサービスをやりたいなら、よく勉強して、地元のホスティング会社と連携を取ることを、お勧めします。先週も、浦東の外高橋にあるホスティング会社と意見交換をしました。
やはり、一筋縄ではいかない国のようです。
「中国の嘘〜恐るべきメディア・
コントロールの実態〜」(扶桑社)にネット検閲について詳しく書かれています。
金盾プロジェクトという検閲システムの開発が進められているようです。
こんちは!
TB頂いたのですが、ブログ名とURLが表示されません。(管理画面では正常にビューされます)
これも中共の陰謀なのでしょうか(w
kingcurtisさん
こちらで確認する限りでは、http://blog.livedoor.jp/kingcurtis/tb.cgi/19286087 に対してのPINGは正常に終わっているようです。再度、お送りしたほうがよろしいでしょうか・・?
TBありがとうございます。
検証ご苦労様でした。確認してみたのですが、日本では問題ないのですね。日本版金盾プロジェクトが始動しない事を切に望みます。
昨年上海滞在中、ホテルの部屋からモデム接続してGoogle JPで日本語のキーワード(何を調べたのか忘れましたが、)でサーチした時、サーチ結果のキャッシュに全てアクセスできませんでした。
Googleのキャッシュは全てブロックされていると推定。
昭吉さん:
先日確認した際には、キャッシュは利用できました。
時々刻々と、仕様が変わっていっているようですね。
近々出張予定なので、暇があれば確認してみましょう。