東証一部に上場しました

さくらインターネット株式会社は、本日東証一部に上場しました。
1996年12月に18歳でさくらインターネットを創業し、紆余曲折ありながらも2005年10月にマザーズへ上場し、それから10年と1ヶ月で一部への市場変更となりました。
もともと、一介の高専生が学内ではじめたサーバーレンタルに端を発する、さくらインターネットですが、19年の歴史の中で、多くのお客様や社員の皆様ほか、株主の方や業界の方など多くの方に支えられてここまで来れました。
また、笹田さんや小笠原さんをはじめ、スタートアップ期に活躍頂いた方々なしには、いまのさくらインターネットは無かったと思います。
改めて皆様に感謝いたします。本当にありがとうございます。

なお、当社は2005年にマザーズへ上場したあと、2007年に債務超過となり経営に非常に苦労した時期もありました。一部上場はあくまでも通過点でしかなく、決して奢ることなく、しっかりと真面目に社業を発展させていくことを肝に銘じて、経営に取り組みます。
また、これを機にというわけでもありませんが、さらにサービスの改善を進めてお客様により満足頂けるようにまい進するとともに、一緒に働く人達が元気に明るく幸せに働ける職場を実現し、結果として高収益企業となり、株主の皆さんにも成長の果実を感じていただけるような、誠実且つ明るい会社に出来ればと思います。

最後に、一部に上場したからと言って、お堅い会社になろうと言う気はありません。
安定感は重要ですが、常にチャレンジを忘れることなく、顧客満足度の向上と、働く人のモチベーションを高めていくことが最も重要であると考えています。
今よりさらに、皆様に愛されるさくらインターネットを目指してまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

20151127-tse2

さくらのクラウドと、レッドオーシャン戦略

ブルーオーシャン戦略。
まだ開拓されておらず競争が無い新たなマーケットをブルーオーシャンと呼び、価格をはじめとした血みどろの戦いをしなければならないマーケットをレッドオーシャンと呼びます。
なら、レッドオーシャンを泳ぐより、ブルーオーシャンを泳いだほうが良いじゃないかということ。
これは欧州経営大学院教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュが著したビジネス書で述べられたもので、日本ではランダムハウス講談社から「ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する」として出版されています。
例えば、10分1000円のQBハウスは他の理容店と血みどろの戦いをしているように見えつつ、スピードという差別化要因によって顧客数と業績を伸ばし、実はブルーオーシャンのプレイヤーなのだということが示されています。
これ以上の内容については当該書籍に任せるとして、先日#cloudmixや#yakocloudにて私が発言した「さくらのクラウドにおいて、レッドオーシャンを泳ぎきるというのが戦略」という事について述べてみたいと思います。

さくらのクラウドは、昨年11月に開催されたクラウドエキスポにおいて「何の変哲もないIaaS型クラウドを圧倒的なコストパフォーマンスで提供する」というキャッチで発表をしました。
IaaS型クラウドにおいては、これから競争が激化することが考えられ、各社高付加価値化による差別化を考えている中にあるわけですが、当社はあえて「低付加価値戦略」というのを提起したいと思っています。

アメリカの国立標準技術研究所が発表した「クラウド定義」というものがありますが、それに対する「さくらのクラウド(IaaS)」の解は以下のとおりです。

  • マルチテナント

  • 当社の用意するシステムを共用しコストをシェアして頂くことで、安価かつ大規模、高信頼なシステムを利用頂けます。
  • すばやい増減

  • 数十秒でサーバやストレージを用意したり、解約したりできます。
  • オンラインアクセス

  • 日本一のバックボーン容量の回線を経由し、高速かつクライアントに依存しないアクセスを保証します。
  • 見える化

  • 利用状況を常に把握でき、適切なシステムサイズを判断できます。
  • セルフサービス

  • お客様自身でサーバは当然のこと、ネットワークを含めて自由に設計ができ、全て自動化されています。

私たちの解は、高性能で安定性の高いサーバを安価に提供され、それを自由にネットワーク化でき、使いやすいコンパネ or API で即座に増減できればいいじゃないかというものです。
これはクラウドの定義からまったくぶれていないつもりです。
自動でスケールアップしないし、サーバの中身を管理しないし、メールの大量配信機能も無ければ、CDNも備わっていません。いわば付加価値と呼ばれるものを一切付けず、必要なもの「だけ」を用意したのが「さくらのクラウド(IaaS)」です。
「必要なときに必要なだけ」がクラウドだったはずが、「付加価値」「高機能」というキーワードを元に、必要の無いものに費用を負担させられるのが今のクラウドを取り巻く状況だと思っています。
事業者から見ても、いろいろとライセンス料や運用コストを払って付加価値を用意し、開発コストを払って高機能を付けながら、結局値段競争に入ってコストが回収できないかもというつらいところです。
そもそも付加される価値や機能の多くは事業者間で似通ったことになっており、結局差別化要因にならないということも併せてつらいところです。
むしろ、付加価値を用意せずに、パートナーがAPIを通じて価値・機能を付加して、ともにビジネスが成長する状況にしたいと思っていますし、付加価値向上にヒト・モノ・カネを突っ込むよりは、パートナーに手厚い技術サポートをしたほうが良いと考えています。

こう見ると、私たちのような「高性能、高安定性、低価格」+「拡張性」に徹した日本のIaaSは少なく、タイトルではレッドオーシャンと書きましたが、実際には意外とブルーオーシャンだと考えています。
当たり前のもの(ちゃんとしたもの)を安価に売るというのは、日本のお家芸だと思います。
日本らしいクラウドというのは世界中で売られる車のように、決して品質が悪いわけでもなく、極めてコストパフォーマンスに優れたものにすべきだと思っています。

この戦略は当たり前のように見えますが、みんなやっていないし、少なくとも大規模低コストデータセンター、自社製基盤システム、万単位のサーバの運用ノウハウなど、他社がまねたとしても数年はかかるでしょうし、その間にしっかりとシェアをとり、本当にレッドオーシャンになったときに先行者として強みを持つという形が「本当の戦略」です。
恐らくは、スケールの大きいIaaS事業者と、それを活用する付加価値に強みを持つインテグレーターに二分されるのでしょう。当社としては前者が目標です。

ところで、cloudmixではトイレットペーパーの例を出しました。
「トイレットペーパーを半額にしたからといって、倍の数を買うでしょうか?買わないですよね」という話でした。
もし気合を入れて倍使ったら、お尻が痛くて大変です。
そういった日用品(コモディティ)市場においては、高付加価値化で顧客単価を上げ、トップラインを増やすというのが当然の戦略です。
食料品なども一緒で、とにかくお尻も胃袋も倍の数/量にはなりません。
ましてや、ウォシュレット(シャワートイレ)の登場や、ダイエットの流行など、決して追い風ではありません。

ただ、サーバは安価になればもっと買ってくれるというという世界が待っています。
例えばさくらのVPS 980は、専用サーバ7,800円/月の新規契約を奪いましたが、従来の10倍以上の新規申し込みを受けており、1年で2万を超えるインスタンスが稼働中(解約を差し引いた純稼動数)ですし、上位プラン比率も高まってきました。
コンピューティングリソースが更に安価に、更に使われる世界がくると思っていますので、価格が下がることは市場の縮小を意味するものではないと思うのです。
(といいつつ、月額千円を切るようなIaaSを出すツモリはなく、「絶対価格」を下げることに意味は無いと思いますが...)

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ところで、私の嫁がタイムリーに「トイレットペーパー買いすぎたー!」と言ってきました。
Amazonの定期便で見積もりを誤ったようで、まだ在庫があるのに送ってきたという話です。
そこで「いっぱいつかわな無くならへん。」と一言。「いや違うやろ」と突っ込み。場所以外困ること無いから、無理して使わなくていいだろうと。
しかしまあ、自宅のトイレットペーパー在庫を増やさせる or 定期的に送りつける戦略は、日用品における良い回答かもと思った瞬間でした。
クラウドではなく、我が家の日用品から攻めてくるとは、恐るべきAmazonさん。機関の陰謀ですね。

と、オチがついたところで。

ちなみに、IaaSだけでなくPaaSやSaaSに対する戦略もありますが、それは機会が来たときにということで。個人的にはPaaSがさくららしさを表現できるステージだと思っています。

双日株式会社による当社株式のTOBについて

本日、双日株式会社によるさくらインターネット株式のTOBが発表されました。
また、当社取締役会はTOBに対して賛同意見を出しております。

さくらインターネット: 双日株式会社による当社普通株式に対する公開買付けに関する賛同意見表明及び同社との業務提携契約書の締結のお知らせ
双日: さくらインターネット株式会社株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ

今北産業で表現すると

  • 約30%の株式を持つ筆頭株主の双日株式会社が、約10%の買い増しを行い、約40%まで出資比率を引き上げる。
  • これにより、双日株式会社が約40%、私個人の資産管理会社(株式会社田中邦裕事務所)が約10%、私個人が5%となり、過半数(約55%)が安定株主となる。
  • 双日株式会社は、株式会社田中邦裕事務所と株主間協定を結び、さくらインターネットを子会社化する

ということです。

以下に、質問の多そうなところをまとめておきます。

  • 双日株式会社は現在約30%の株式を持つ筆頭株主であり、TOB成立後も引き続き約40%の株式を持つ筆頭株主です。
  • 株式会社田中邦裕事務所は株主間協定を結ぶだけでTOBに参加しません(一切株式の売却をしません)ので、TOB成立後も第2株主として残ります。(株主間合意書に基づく)
  • 取締役は、特に両者が合意しない限り、当社が4名、双日株式会社が2名を指定しますので、現在の経営体制から特に変更はありません(業務提携契約書に基づく)
  • サービスについては、今までどおりの体制で運営を続けますので、戦略を含めて特に変更はありません
  • 双日株式会社、株式会社田中邦裕事務所、私個人の持分は、合計で約55%にとどまり、東京証券取引所の上場は今までどおり維持します
  • TOB成立後は、サービス・営業分野における事業提携、海外展開における事業提携、インフラ分野での事業提携、技術分野での事業提携を目指します。

唐突な話で、皆さんにはご心配をおかけしたこともあるかと思いますが、双日株式会社はそもそも以前から筆頭株主でありますし、同社派遣の2名の社外取締役と共にサービスの拡充に努めてきた経緯があります。
1/3以上の株式を取得する際にはTOBをしなければならないという金融商品取引法上の定めもあり、大げさなことになっていますが、上述のように特に大きな経営体制の変更はありませんので、ご安心頂ければと思います。
今後は、当社の得意とする既存サービスの拡充に加え、一般企業向けサービス拡充を通じて、さらなる成長を目指しております。

今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

なぜもめる?日本におけるドメイン登録独占の影響

先日、GMOの熊谷社長が自身のブログ上において、JPRSさんがレジストラ業務を開始することについての公開質問を掲載されました。

株式会社日本レジストリサービス(JPRS)さんへの公開質問です

内容を今北産業でいうと、

独占的にJPドメインを扱っているJPRSさんが、
誰でも参入できるgTLDドメインの扱いをはじめる表明をしたため、
同じくgTLDを扱っており競合になるGMOさんが「フェアでない」という声を上げた。

ということです。

私も「フェアでない」と思っていますし、JPRSユーザ会という場においても「JPRSさんがgTLDドメインの取扱いをやらないほうがいい理由」を話しました。
しかし、多くの中小事業者はJPRSさんにgTLDドメインを取り扱ってもらいたいという考えでしたし、そもそも今回のろしを上げたGMOさんはその場に出席すらしていませんでした。

そういった経緯もあり、今回の件についてこれ以上の指摘は無意味だろうということで、特に関わるつもりもありませんでしたが、さまざまな方から私へのさぐりが多く、考えを聞かせてくれというメールも多いので、自分の考えについて経緯を踏まえながら書かせて頂くことにしました。
長文ですが、お時間があればお付き合いください。


はじめに

まずはじめに、レジストリとレジストラについて解説をします。

ドメイン名の登録というのは、複数の人に重複して登録されないよう一意性が重要になります。
そのため、トップレベルドメイン(TLD)ごとにデータベースは必ず1つである必要があり、単独の一社で管理されています。このデータベースを管理する事業者のことをレジストリを言います。
そして、レジストリのデータベースを利用して、実際にドメインの登録を行う事業者のことをレジストラと言い、TLDごとにたくさんの事業者が存在します。
さくらインターネットはレジストラではありませんが、GMOさんをはじめ、ライブドアさんやファーストサーバさんなど、国内にも多くのレジストラが存在します。
レジストリとレジストラを分けるのは非常に煩雑ですが、その煩雑さを乗り越えてでも参入の平等や競争環境の創出を目指して、先人たちが大変な苦労を乗り越えて分離モデルを作り上げました。

しかし、分離モデルは.com / .net / .info のようなグローバルなTLD(gTLD)において行われているのが大半で、国別ドメイン(ccTLD)においてはレジストリとレジストラが分離されていないことも多く、日本のドメインである.jpにおいては指定事業者というレジストラに順ずる事業者はあるもののJPRSというレジストリ事業者の権限が非常に大きいのが現状です。

そのような環境下に置いて、独占状態による競争の無さからドメインが高額であるとの指摘が多く、事あるごとに議論が続いてきました。
また、JPRSさんにおいては、レジストリを独占的に行いながら、ユーザへ直販するJPDirectというレジストラ機能も行っており、gTLDのようなレジストリ・レジストラ分離は行われていません。おまけにJPRSさんが、.comや.netといったgTLDのレジストラも開始するということになり、大きな問題に発展しています。

今回は、.jpが独占的であるということと、ドメインが高額であるということに加え、他ドメインのレジストラを行うことに対する問題点を書きたいと思います。


独占的であるということについて

.jpにはレジストリは1社しかありません。前述の通りJPRSさんが行っています。
その上、thick registryと呼ばれる、whoisや個人情報の管理までレジストリが行う「大きなレジストリ」形態をとっているため、さくらインターネットやGMOさんのような事業者はJPRSさんに取次ぎしているだけで、ドメインの管理を行ったり、価格をコントロールしたりする権限は極めて少ない状況です。
このような環境下に置いて、コスト体質であるとか、経営の決定プロセスが開かれていないとか、莫大な利益を上げ特定の株主が配当を受け取っているとか、多くの指摘がなされています。

ただ、国別TLD(ccTLD)において特定の団体の力が強い状況は日本以外でもありますし、結論から先に言うと「特定の人に利益が生まれるような状態で無く、信頼性の高い運営が行われているのであれば、独占状態も消極的に受け入れても良い」と考えています。
JPRSさんの役員には天下りなど、いわゆる給与泥棒に当たるような役員はいないはずですし、経営陣は健全見えます。
コストが高いという点についても、世界的に見て大変信頼性の高いDNSシステムを構築していますし、ドメインに関する研究開発に資金を拠出しているのも事実です。

特定の会社名は出せませんが、「自分がやれば.jpはもっと安く出来る」と仰っているとある会社においては、数度にわたりドメインの根幹であるDNSシステムに障害を発生させ、数日にわたってダウンさせるという事態に至っています。
その際には同じネットワーク(LAN)かつ近傍(同じ?)のラックにプライマリ・セカンダリのネームサーバを設置していたということが露呈して、たいへん問題になりました。

DNSが止まると、いくらネットワークやサーバが頑丈でもインターネットは利用できないに等しい状態になります。事実、他国のドメインにおいて何度か止まってしまって苦い経験をしたこともあります。
それだけ重要なインフラなわけですから、JPRSさんの運用体制については大変信頼しています。

ただ、配当に関してはやめたほうが良いのではないかと思っています。
かくいう当社もJPRSさんの株主であり、毎年少なくない配当を受け取っています。
しかし当社は配当をもらうために資金を拠出したのではなく、信頼性の高いjpドメイン運営を続けるための安定株主として拠出したわけですし、かつJPRSさんがおかしなことになってしまったときにモノを言う権利を留保するために拠出したわけです。
JPRSさんの株主では大手事業者のほかに、現経営陣も大株主になっておられます。
現経営陣が自分のために配当しているわけでないのは良く知っていますが、経営者はストイックなまでの清廉潔白さが必要だと私は考えています。
なので、少しでもうがった見方をされるような経営判断は、積極的に回避すべき考えます。

また、経営陣についても定期的に見直すくらいの気概は必要かと思います。
少しだけJPRSさんの擁護をするなら、JPRS設立当初は事業性も非常に不安定で、世間で言われるほど確実性の高い事業計画でもなく、その当時に役員になり、身銭を切って出資した人たちは賞賛されるべきであると思います。
ただ、公益性の高い独占企業の経営者は極めて透明性の高い行動をするべきだと思いますし、勝手な言い分であることは承知の上で改善をお願いしたいところであります。

高額であるということについて

次に高額であるということに対する話ですが、私はjpドメイン名が絶対的に高いとは思っていません。
以前は値下げ論者でしたが、「相対的に高い」「絶対的に高い」という尺度において、後者だけで物事を見ても意味が無いと思います。
jpドメインが相対的に高いのは、jpドメインの数が相対的に少ないからだけです。

先日、.jpが世界でもっとも安全との調査がありました。
コレにはJPRSさんの努力はあるでしょうけれど、実際には.jpがそれなりに高いのと、日本国内のユーザに限定していることが影響しており、少し高いけど信頼性の高い.jpドメインという方向性は成功しているように見えます。

「.jp」は世界で最も安全なccTLD、McAfeeの調査で2年連続
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20101028_403080.html

またJPRSさんでは、「大きなレジストリ」体制を活用し、インターネット全体に影響を与えてしまうような失敗設定に対して積極的に修正依頼を行ったり、DNSSECなどの新技術に対して積極的に取り組んだりと、世界的に見ても熱心で手厚い登録事業者であることは間違いありません。

企業にとって、汎用JPの卸価格である年間2,250円は本当に微かなコストだと思います。
安いドメインが必要ならgTLDをとればいいだけですし、.jp以外の選択肢があるわけですから、相対的な値段にこだわっても意味がありません。
さくらインターネットのレンタルサーバにおいては、jpドメインの倍以上のgTLDが管理されていますし、私自身も.jpドメインはgTLDより高いので、信頼性の必要なドメインでしか.jpは利用していません。

要は選択の問題です。
「信頼性はそこそこほしいが、手厚い管理体制はいらないし、やっぱり安いほうがいい」ということなのか、「少々高くても、しっかりとした管理体制があり、信頼性は高いほうがいい」ということなのか、どちらかです。
ドメインには、少々止まっても安ければよいという個人ユーザから、100万円払っても良いから止めてもらったら困るという大手サイト管理者まで居ます。
私の個人ドメインと、mixi.jpだと価値の差は歴然ですが、ドメインにはこの2者が入り乱れているのが難しいところで、単純に安ければよいという議論ではないと思います。
もちろん配当減らしてドメイン値下げせよというのは理解できます(ただ配当やめても1割も下がりません)が、そもそもドメイン数がgTLD並に存在しない限り大幅な値下げは難しいと言わざるを得ません。

余談ですが、大幅な値下げが行われた際に懸念していることがあります。
それは、解約ドメインなどに対する広告掲載です。
gTLDの場合、ドメインを解約するとほぼ間違いなく広告業者に食い物にされます。
多くのウェブサイトでは、更新をやめても1日に100件程度はアクセスがあるそうなので、1ヶ月で3,000件となり、0.1%がクリックされたとして年間36クリックとなります。1クリックが50円だとすれば、これだけで1800円の収入となります。
ただ、.jpドメインだとドメイン自体が高いので、上記のようなビジネスモデルが成り立ちません。
ドメインが安くなってほしいという考え方の裏には、解約ドメインなどに対する広告によるビジネスを成り立たせたいという勢力も少なからず居るのを知ってもらえればと思います。
さくらインターネットではやましい商売をしたくないので上記のような行為はしていませんが、試算では年間数千万円近い利益が出るということが分かっており、収益性の高いビジネスであるのは事実です。


JPRSさんがレジストラをやる件について

これは、どちらかというとGMOさんの意見に賛同するところで、結論から言うとJPRSさんはレジストラをやるべきではないと考えています。
実際、JPRSユーザ会という場において、「ドメイン名の管理を行う"レジストリ"と、ドメインの登録販売を行う"レジストラ"は別々に運用するのが世界の潮流であり、便利だからといってJPRSがやっていい問題ではない。」という話をしました。
むしろ、JPRSこそレジストリ・レジストラ分離の議論の対象なわけですから。

しかしながら、ドメインの扱いの少ない事業者からは、「大手事業者と違って我々は海外のレジストラと代理店契約をするのは面倒だし、ドル建支払いも手間。ぜひ国内事業者であるJPRSさんにやってもらえば便利」という話が出ました。

なので私は「国内でも、GMOさんや、ファーストサーバさん、ライブドアさんなど、多くのレジストラがあり、そこと代理店契約すればいいのでは?」と言いました。

それに対して「なぜ当社がGMOさん、ファーストサーバさん、ライブドアさんからドメインを買わなければならないんだ!」という返答です。

私は「なら、なぜ当社がJPRSさんからJPドメインを買わなければならないんだ!」と言いそうになりましたが、グッとこらえて意見するのをやめました。

私自身は現在の独占状態は良い事ではないと思いつつも、その体制によって信頼性の高いJPドメインが維持されている状況は迎合しても良いと考えています。

ただ以下の図のように、レジストリとレジストラが兼業していても単独のドメインに専念するか、完全に分離を行い複数のレジストリとレジストラが契約を結ぶのが通常ですので、今回のレジストリとレジストラを兼業しつつ別のドメインも取り扱うJPRSさんのモデルは大変いびつに見えますし、世界的に見てもほとんど例がありません。

20101103-registry.png

JPドメインは、8割の登録が2割程度の事業者によって行われています。
さくらインターネットやGMOさんをはじめとした、たくさんのドメインを取次ぎしている事業者によって8割のドメインが登録されていますが、社数で言うと2割でしかなく、意見を言う上ではマイノリティです。

事業者のJPドメイン取次ぎランキング

マジョリティである小口の取次ぎ事業者の方々は、自分たちの業務が楽になるからとJPRSさんにgTLDのレジストラをやることを要求していて、それは理解できる部分も多いのですが、「なぜ、レジストリ・レジストラという2つの存在があるのか?」という、理念的なことは共有しておいたほうが良いと思っています。

繰り返しになりますが、私は.jpの独占状態は消極的に受け入れて良いと思っています。
しかし、gTLDのレジストラを兼務するのであれば、.jpのレジストリとレジストラの分離問題に対して根本的な議論を再開すべきだと考えています。

だらだらと書きましたが、私の意見をまとめると
「JPRSの独占状態や多少の高額は、信頼性の裏返しとして受け入れるが、それ以外のドメインにうつつを抜かすな」
ということです。

GMOさんとは根本的な考え方も、理由も全く異なりますが、それでもJPRSさんがgTLDのレジストラをやらない方が良いというのは同じ意見ではあります。
JPRSさんには再考頂くことをお願いしたいところです。

※ちなみに、内容に対してJPRSの東田社長からもコメントが出ているようです。(2010/11/5 20:50 更新)
熊谷会長のブログへのコメント

※レジストリとレジストラの位置づけが混同しているのではとの指摘があり、表記を全面的に見直しました(2010/11/5 23:50 更新)

さくらのVPS提供開始にあたり

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本日より、さくらインターネットの新しい柱となる仮想化サービスの第一号として、さくらのVPSを販売開始することとなりました。

さくらのVPS お申し込み受付開始のお知らせ

皆様からは「えっさくらがVPSをやるの?」という声も多く頂いており、その反響の大きさに驚いています。
そもそも、昨年あった@ITの取材においては「劣化専用サーバとなるVPSはやらない」と豪語しており、同業者の会合でも「さくらはVPSやらない」と宣言していました。

大阪・堂島に、さくらインターネットの秘密を見た ?自前だからできる本当の差別化
http://www.atmarkit.co.jp/ad/sakurainet/200905/doujima.html

その理由としては、仮想化を行うより、専用サーバでとことん安くしたほうが良いのではないかという考えがあります。
コンソール機能や再起動などはIPMI(Keyboard VGA Mouse = KVM)によって専用サーバでも実現できますし、さくらの専用サーバについては、翌営業日納品も実現していますから、仮想サーバで無いとできないと思われていることも実現が進んできています。
また、仮想化することはオーバーヘッドを生むことにもつながり、CPUパワー度無駄にする側面もあります。

しかし、仮想化には代えがたい優位性があることも事実です。
例えば、専用サーバアドバンスドプランのQuadCore Xeon×2CPU構成の場合、初期費用無料で月額35,800円ですが、仮想化して8分割すれば1コアあたり4,475円となります。低価格専用サーバはAtom Z530を4,500円程度+初期費用で提供予定でしたが、ATOMの1コアとXeonの1コアだと仮想化のオーバーヘッドを考えてもXeonのほうが高速であり、さらには安価に提供できるという状況になってしまいます。
私自身がやっている某サイト(とある櫻花の画像生成)においても、データベースやリバースプロキシ、画像配信などを、仮想化を使って複数のサーバに分けて運用することにより、アクセス急増時も効率よくサーバ運営が出来たという経験があり、比較的安価にサーバ分割が出来る仮想化の利便性を知ることになりました。

結局、既存形態のサービスに固執するがあまり、さくらインターネットが本来強みとしていたITリテラシの高いユーザへのサービスへの魅力が薄れ、そのようなユーザが海外のクラウドや格安VPSへ流出し始める状況に至ります。

このような事から、仮想化の推進を行い、さらにVPSやIaaSへの拡大を進めていくことを決断し、第一号としてさくらのVPSを提供開始することとなりました。
4月末に「VPSやるぞ。でも全て自社開発で」と突然言い出してから、2カ月程度でベータ提供にこぎつけたのは社員の頑張りのおかげでもあり、大変感謝しています。
今後は、専用サーバのさらなるスペックアップと並行して、仮想化による柔軟性や手軽さを追求したサービスを拡大していきます。

なお、さくらのVPSの登場で既存の専用サーバが売れなくなるのではという意見もあります。
この意見については当然の事ですし確かに大きな影響があると考えていますが、今回のVPSを始めるにあたってはそのような影響を一切無視してサービスづくりを行いました。
専用サーバが売れなくなるのであれば、それは専用サーバの魅力が薄れていただけの話であり、その様なサービスは遅かれ早かれ他社(または海外)に駆逐されるだけだと考えています。

先にシェアを取っている会社は常に既存の売り上げとのバランスを考えがちです。
しかし、さくらのレンタルサーバにしても、専用サーバプラットフォームSTにしても、常に既存の売り上げに固執せず、新しい柱を創ることへ注力してきました。
ですので、今後も性能、品質、サポート、価格など全ての面に妥協することなく、さくららしいサービスを創っていくことを皆さんにお約束します。

ところで、さくらインターネットでは石狩へのデータセンター建設を進めております。
クラウド化する中で、インフラのコストパフォーマンスはさらに重要になってきており、高いコストパフォーマンスを実現できる理由としてのインフラ追求はますます必要です。
しかしながら、重要なのはインフラだけでなく上に乗るサービス自身もだと考えています。
今後は、インフラに、サービスに、全てのレイヤーを自前で行えるという強みを伸ばし、さらなるサービス拡充に努めてまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

「さくらのVPS」はじまります

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バレンタインデーのラックチョコ以来、ずいぶん更新をサボってしまいましてすいません。

最近、ツイッターで意見や感想を吐き出してしまうので、なかなかブログの更新ができておりませんでした。
どうも、考えが成熟する前に、小出しでつぶやいてしまうのがアカンです。
ブログで書くからウェブサイト更新をしなくなり、ツイッターでつぶやくからブログを書かなくなり、次はどうなるのでしょうか・・。

さて、さくらインターネットでは9月より「さくらのVPS」と称してVPS(仮想専用サーバ)サービスを始めることを発表し、さる7月15日よりクローズドベータテストを開始することになりました。
ただ、十分だろうと考えていた200ユーザ(急遽300ユーザに拡大)の枠があっという間にいっぱいになってしまい、すべての方に試用頂けていないことを深くお詫びいたします。
ついては、ベータテストのユーザ数を増やすべく、サーバーやラック、ネットワークの準備を進めることにしましたので、8月初旬より追加で募集が可能な見込みです。

今回のVPSを開始するにあたり、社内外から「さくらはVPSやらないんじゃなかったっけ?」という話をいただきました。
とある記事では、「劣化専用サーバとしてのVPSには競争力はない」などと豪語し、周りからは「さくらはVPSをやらない」と言われてきましたが、サーバ再起動やOS再インストール、コンソールといった、VPSならではの管理機能を搭載してリリースすることにしました。
今後、専用サーバにIPMIを搭載して、VPS同様に管理機能をサポートする予定であり、ハイスペックな専用サーバと、リーズナブルなVPSをハイブリッドで提供していくことにしています。
併せて時間課金などのシステム強化を行い、仮想サーバをベースとしたIaaSや、KVSなどのPaaSを拡大させて、さくらインターネットらしいクラウドサービスにしていく予定にしています。

さくらインターネットでは、先日発表した石狩データセンターによって米国と同様のコスト構造を手に入れるとともに、上記のようなクラウドサービスによるサービスの柔軟性を達成したいと考えています。
また、東京都心の1,000ラック以上を活用し、クラウド、ホスティング、ハウジングのハイブリッドサービスを追及していく予定です。
これらによって、海外にも通用し、日本国内においてはさらに優位性を発揮できる強いさくらインターネットを作り上げていきます。

さくらインターネットのサバ手ぬぐいが出来ました

営業部員の力作、さば手拭が完成しました。

専用サーバ、専用サーバ複数台構成、専用サーバプラットフォームを、何となく解説しています。
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写真では少し見にくいかもしれませんので、画像バージョンで。

専用サーバは一匹だけのんびりインターネットにぶら下がっています。
専用サーバ複数台サーバは、インターネットにぶら下がったウェブサーバの下に、DBサーバがぶら下がっています。
専用サーバプラットフォームは、ファイアーウォールを介して、さまざまなサーバがネットワーク化されています。ちなみにDBサーバはローカル側にしかつながっていません。

サメも心なしか寂しそうにしていますね。


年末押し詰まる忙しい中とは思いますが、うちの営業が挨拶回りとともに配ってますので、笑顔で受け取ってもらえるとうれしいです。

ちなみに、専用サーババージョン。
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サーバまるごと占有可能な「さくらのマネージドサーバ」登場!

本日、さくらのマネージドサーバATOMプランをリリースしました。
これは、従来より要望の多かった、さくらのレンタルサーバ占有版と言えるサービスです。

さくらインターネットは、専用サーバ1万台突破と、さくらのレンタルサーバの20万ユーザ突破を、相次いで達成しました。
現在、専用サーバにおいては、信頼性と自由度が高くエンタープライズ用途にも耐える「専用サーバプラットフォーム」や、よりリーズナブルに自由な構成を実現できる「専用サーバプラットフォームSt」、メーカー製のサーバを初期費用なしで利用できる「専用サーバアドバンスドプラン」、価格的なメリットを強調した「専用サーバエントリープラン」など、幅広い商品ラインナップでお客様のニーズにこたえてきました。
また、さくらのレンタルサーバについては、125円で利用できるライトプランのほか、ビジネスプランの投入によって性能や信頼性の向上を実現し、法人ユースにも耐える定番のホスティングサービスへと成長しました。
その上で、専用サーバのように専有できる形態でありながら、サーバ管理を自前で行わなくてもよいマネージド型サービスへの要望を多く頂いておりました。

そのため、専用サーバで培った信頼性と運用効率を生かしながら、さくらのレンタルサーバにおいて利用実績の高いホスティングシステムを搭載を活用した、さくらのマネージドサーバを投入することとなりました。

今回は、先行してATOMプランの投入となりましたが、今後さらにハイスペックなサーバを利用した上位プランの投入も予定しております。
申し込み受け付けは12月10日からですので、ぜひご利用ください。

新サービス「さくらのマネージドサーバ」Atomプラン提供開始のお知らせ
http://www.sakura.ne.jp/news/archives/20091130-002.news

クラウドじゃなくても、すぐ使える専用サーバ

昨日のことですが、専用サーバ(エントリープラン)の翌営業日提供開始についてのリリースをしました。

専用サーバ エントリープラン翌営業日サービス提供開始のお知らせ
http://www.sakura.ad.jp/news/archives/20091125-002.news

最近、リソースをすぐに追加したい!いらなくなったら解約したい!という要望が高まってきました。
このサービスは、そのような要望に答えるためのもので、もちろん別途費用はかかりません。
オンラインサインアップにてクレジットカード払いにして頂ければ、翌営業日にはIPアドレスとパスワードが届くということで、急な増設にも素早くこたえます。
なお、専用サーバ(エントリープラン)の場合、最低利用期間は3カ月ですので、それさえ過ぎれば前月20日までに申請するだけで、いつでも解約ができます。

最近、クラウドコンピューティングに注目が集まっていますが、専用サーバでできることもたくさんあります。欲しい時に欲しいだけ、すぐに用意するということは、専用サーバで十分可能ですし、数百件レベルでサーバの開通をしているさくらインターネットだからこそできるサービスだと考えています。

今後、クラウドコンピューティングの強みもはっきりと認識しながら、専用サーバで出来ることはこれからも広げていきますので、今後もご期待下さい。

専用サーバ: http://server.sakura.ad.jp/dedicated/entry/index.html

運用保守を強化!MSPサービスの開始について

今回、お客様のシステム運用・保守を行う、マネジメントサービス(MSP)への進出を発表しました。
MSPサービスの提供にあたっては、米国のNetEnrich社と提携を行い、インドのオフショア拠点を活用して、ハイエンドな技術者による24時間365日のサポート体制を実現します。

「NetEnrich 株式会社とのマネジメントサービスプロバイダ事業に関わる業務提携に関するお知らせ」
http://www.sakura.ad.jp/ir/news/archives/20091029-001.news

当社においては、昨年2月に双日株式会社への第三者割当を行い、双日グループの一員として事業の拡大を進めてきましたが、同じく双日グループであるNetEnrich社との提携により、グループ内でのシナジー効果を生み出せるものと考えています。

現在、高付加価値サービスの代名詞として参入が伸びゆくMSPですが、当社の場合はオフショア拠点活用によるコストパフォーマンスの最大化と、データセンターとのワンストップ体制による柔軟かつ迅速な運用保守体制を武器として、先行する事業者に対する大きな差別化が可能であろうと考えています。

今後、ハウジングやホスティングサービスの拡充と並行し、MSPという新たな事業の柱を育て上げ、IT企業のみならず、一般企業のIT需要を取り込める体制を構築していきます。