実は裏付けの無い最高速度

今回の事故でしきりに取り上げられている速度超過ですが、福知山線で設定された各地点の速度制限が、そもそも根拠のあるものなのかどうかということが、気になるところです。
というのも、ご存じない方が多いと思いますが、鉄道における最高速度については、転覆や脱線といった観点はなく、緻密に計算して設定されているものではありません。唯一、法令での基準があるとすれば、「踏み切りのある路線においては、非常ブレーキ後600m以内で停止しなければならない」と言う、国土交通省から出された技術基準だけです。つまり、600m以内で停止さえ出来れば、運転計画として作成することにより、いくらでも高速化することが可能です。
つまり、国土交通省はJR西日本の高速化について、明確な基準による指導が出来ない状況であったことがわかります。

福知山線の復旧とATS-Pの設置

先日の列車脱線事故から、2週間が経ちました。いろいろと報道がなされ、少しづつ状況や背景などが分かるようになってきました。
その中で、「速度超過」と「ATS-P」というキーワードが注目されています。事故の原因と、防護できた可能性ということでよく出てくるわけですが、結局は遠因といえる体質に無理やりつないでしまっています。もちろん、体質にも問題があるのは明らかで、私もそれについては述べてきました。
しかし、速度超過を「厳しい労務管理」、ATS-Pを「安全投資抑制」という観点からつないで、『体質だ!』とJRを批判することではなく、実際にどういう影響を与えたのかを掘り下げていくことが重要です。

脱線するほどのカーブの理由

la3751氏より、ダイヤは過密ではないに対するコメントにて、「現場のカーブなどはかえって急カーブとなったなどとも聞きますが、どうしてなのでしょうか」とのご質問を頂きました。
4/25の列車事故において記述していたカーブの付け替えについて、朝日新聞や毎日新聞などのマスコミでも取り上げられ始めましたが、その理由についてはそれほど言及されていない状況です。その為、今回はカーブがなぜ作られたかと言う観点で話をして見ます。

ダイヤは過密ではない

尼崎の列車脱線事故について、福知山線のダイヤが過密であった旨の報道がなされています。
しかし、福知山線のあのあたりでは、一番本数の多い7時代でも1時間に16本程度しか走りません。これは、大阪や東京などの大都市においては、それほど多い数字ではありません。
増してや、今回の9時あたりの列車は、1時間に12本程度です。これは、大して大きい数字ではありません。
東京のJR山手線とか大阪の地下鉄御堂筋線は、2分未満の運行間隔であり、1時間に30本以上やってきます。これに比べれば「過密」ということは言えません。

私は、過密ではなく、ダイヤの複雑さと余裕の無い運転時分が問題ではないかと思っています。
事故の原因は、私にもわかりませんので議論しませんが、今回はダイヤに限って話をします。

日勤教育

JRの日勤教育の実態について、報道がされ始めました。
4/25の列車事故と、4/27のJR西日本社員の記事で書きましたが、現場へのプレッシャーは非常に高いことを、以前から聞いていました。
現状の報道姿勢は、好きではありませんが、運転士の糾弾のような雰囲気が若干収まったようで、少し安心しました。

今回の事故で、運転士が生き残ったとして、やはり刑事告訴は避けられなかったとは思います。しかし、個人を追及しても、問題は全く解決しません。それよりは、経営者が安全を軽視する、いや安全はデフォルトで付いてくるといった考え方を変えなければ、根本的な解決には至りません。
多くの方が亡くなられ、大きすぎる代償となりましたが、信楽高原鉄道事故や救急隊員死傷事故などでも変われなかった体質が、これを機に変わることを期待します。

JR西日本 vs 大手私鉄

TVで、関西圏におけるJR西日本と大手私鉄の競争が出ていました。
その中で、スピードのJRと値段の私鉄と言うのが出てきます。
しかし、確かに通常の切符であればJRの方が高価ですが、定期の場合にはJRが安くなってしまいます。

例えば、大阪から三ノ宮に行くことを考えて見ましょう。

鉄道会社 時間 運賃 定期
1ヶ月3ヶ月6ヶ月
JR 21分 390円 11,960円 34,100円 57,450円
阪急 27分 310円 12,480円 35,570円 67,400円
阪神 29分 310円 12,480円 35,570円 67,400円
※阪急と阪神は、大阪−三ノ宮であれば、どちらか路線の定期でも、共通で利用できます。

今回事故を起こした宝塚からの列車も、普通運賃なら阪急の方が50円安いのですが、定期の場合1ヶ月なら9,760円と11,010円でJRの方が安く、6ヶ月に至っては46,870円と59,460円で、JRの方が1万円以上安価です。

すなわち、速くて安い。食堂と違って、おいしいとかまずいとか定量的に図りにくいものと違い、はっきりと勝負が付く要素です。こうなると、沿線の住民はJRの駅が遠いなどの理由が無ければJRを選択しない理由はありません。

ところで、先ほどの大阪−三ノ宮間はJRの線路のほうが直線が多く、格段にスピードを出しやすい環境にありますが、福知山線に限って言えば並行する阪急に比べて格段にいいということはありません。それでも、スピードアップを続けていたことは、少々怖くも感じます。

JR西日本社員

昨日、JR宝塚線の快速脱線事故に関する記事を書きました。 → 2005/4/27 列車事故
予想以上の規模の大きさに、ただただ驚くばかりで、犠牲者のご冥福をお祈りします。

今日、私の友人からメールをもらいました。「もう大変だ。うちの会社はどうなってしまうのだろう」という内容です。私が、JR西日本に勤める友人に、仕事は大丈夫かとメールを送った返事です。
あれほどのことが発生してしまい、現場の人たちは本当に動揺し、精神的に不安になっているようです。
鉄道に興味のある私としては、JRで設備を担当している彼から、現場の話は聞くことがありますが、やはり各路線の速度アップに関する話は、よく聞きました。
社是として、スピードアップを標榜し、他の私鉄から客を奪ってきたわけですが、現場にはかなりの無理を強いていたようで、多くの社員が負担を感じていたようです。

今回の事故で、社員も大変です。
もちろん、社会に責任のある会社として、社員が一丸となって、事故に立ち向かっていくことが大事ですが、野次馬のような当事者でもないマスコミによって、遺族も社員も余計な負担を強いられているように見えます。そういえば、突然泣き出してしまった社員がいましたが、相当な精神的負担でしょう。
揚げ足を取るような言動を繰り返す記者の様子を見ていて、個人的にはあまりいい気がしていません。
ただ、JR西日本の対応にも、マスコミと同様に解せないものがあります。
JR西日本は、事故の際、常に自らの責任を回避することに尽力しているように見えます。そして、どうしようもないと思ったときに、突然謝りだしたりします。
信楽高原鉄道(SKR)の事故の際にも、SKR側はすぐに謝罪したものの、JR西日本は最後まで訴訟で対抗しました。救急隊員の事故の際も、最初は責任を回避するそぶりが見え隠れしていました。
裁判のことを考えると、そういった態度に出てしまうことも想像できますが、「公共交通機関」などと証するのであれば、このような態度は到底理解されるものではありません。
例えば、今回の置石の件についても、「うちには責任が無い」という風に、見えた人も少なくないと思います。

会社を作るのは社員ですが、JR西日本の場合は、会社の構成員たる社員は、本当に安全を第一に考えられるような環境にあるのでしょうか。会社が自分のことを守ってくれているという意識を社員がもてず、名実共に使用人になってしまった時点で、JR西日本は一流企業ではいられなくなります。

ところで、そろそろ「定時」「高速」について、よく考え直したほうがいいのではないでしょうか。JALの件でもJR西日本の件でも、スピードアップと定時性が引き金になっていることは疑うべくもありません。
この狭い日本。国民性とはいえ、安全が担保されないまま、満足していても仕方が無いですよね。
もちろん、交通事故の遭遇確率と比較しても、極めて低い確率ではあるのですが・・・

列車事故

皆さんご存知の通り、福知山線(JR宝塚線)で、大きな列車事故(脱線事故・転覆事故)があったようです。

私は、以前宝塚に住んでいましたし、その前はJR宝塚線の終点である篠山口にも住んでいたため、非常によく乗っていた路線でした。それだけに、あれだけ現実離れした惨状が広がっているのが、信じられない状況です。
そもそも、JR宝塚線の尼崎駅へのアプローチは、1997年の東西線開業時(篠山口までの複線化完成)の大幅なダイヤ改正を行った際に、線路も付け替えを行いました。そして、もともとは塚口駅から旧尼崎港駅(福知山線開業時の始発駅で当時は尼崎駅と呼ばれた)までの直線部分から東海道線に渡り線として付いていた線を、下り線に併せて右に大きくカーブするような線形に変更したのです。
その為、私も印象深く、現場については良く覚えています。(マンションが建っているのは知りませんでしたが)

すなわち、下り線だけが走っていた敷地に向けて上り線を曲げるものだから、かなり急なカーブが形成されてしまうことになります。これは、下記の写真の方を見てもらえればよくわかります。もちろん、下り線の方が内側コーナーなので角度は急ですが、東海道本線との分岐点からスピードが上げられないため、さほど危険はありません。しかしながら、塚口側はもともと直線で東海道本線近くまで直線で行く線形になっていることから、スピードがのりやすく、ましてや回復運転中であれば危険な状態になることも想像に硬くありません。
20050425-derail1.png

20050425-derail2.jpg
ただ、私はスピード違反だけの問題ではないと考えています。
「いつもより速度が出ていて、怖かった」という声が多く聞かれますが、JR西日本のアーバンネットワークの主要路線に乗車したことがある人なら、少なくとも速度に関する危機感を持ったことがあるのではないでしょうか。
代表的な例としては、東海道本線の新快速が挙げられます。
新快速は130km/h走行を武器に「速達性」をアピールし、並行する私鉄から客を奪い返しました。しかし、乗車している客は、大概「この電車ちょっと速すぎへんか」と言っています。そりゃ、130km/hも出せばかなりの速度で、東京で速いといわれている京急でさえ、せいぜい120km/hです。この120km/hの速度制限は、JR宝塚線では普通です。
さらに、新快速の中の人の会話はいつもこうです。「この電車ちょっと速すぎへんか?」「でも、阪急よりだいぶはよ着くし、安いし得やで」「ほんまやなぁ」。
なので、直線部分で速いと感じたとしても、それは加速や減速が乱暴だったという運転手のテクニックから「あれっ」っと思った部分もあるのではないでしょうか。

ところで、先ほど急なカーブの話をしましたが、JRが発表している133kmの通過速度上限については懐疑的です。というのも、新幹線程度の精度が無ければ、カーブレールの継ぎ目は若干「しなり」により、完全な連続的曲線になり得ません(もちろん、目で見てすぐに分かるようなものではありませんが・・)。これが、70km/h以下であれば問題にならなくても100km/hを超えると、振動となって車体に伝わります。これに車体が反応してしまうと、浮き上がる感覚が体に伝わります。
新快速の場合も、たまに浮き上がるような感覚がありますが、今回のR300のような急なカーブでなければ、脱線と言う事態にはなりません。
しかし、今回はR300のカーブだったことを考えると、JRが想定する速度より低くても、フランジがレールを超えてしまう可能性はあるでしょう。そうなると、今回のような最悪の事態が想定されます。

また、運転手が落としきれなかった速度にびびって、カーブ部分で非常ブレーキをかけた可能性もあります。この場合、レールを転がることによって逃がしていた力が、逃げ場を失って、机上の133km/h以下でも、脱線させてしまうことがありえます。増してや、現場の映像を見る限り護輪軌条も見当たらず、事故車両である207系はボルスタレス台車なので、日比谷線の事故のときと同じ状況が発生しうるわけです。

福知山線はこの15年で大きく変わりました。
15年前に篠山へ引越ししたときは、まだ2両編成の篠山口行きと、4両編成の宝塚行きが、のんびりと走っている状況でした。しかし、いまは篠山も市制が敷かれ新三田以北の複線化も行われました。さらに、京都の南部も京田辺市の市制施行などが行われ、97年には念願のJR東西線が開通し、福知山線と片町線はひとつの鉄路として結ばれました。
これにより、本数も増えダイヤも過密になり、また尼崎駅への新快速停車による利便性の向上により、福知山線がローカル線でいられなくなってしまったのです。しかし、設備といえば昔のまま。今回事故を起こした207系は、ローカル線色濃い福知山線にとって、唯一アーバンネットワーク加入を誇示できる大切なアイテムのひとつでした。いままで、主要線区のお下がりばかりだったのが、「主要線区」に仲間入りしたのです。
しかしながら、ハードだけでは何事もうまくいきません。JR西日本の駅には「ハートアンドアクション」と掲示しています。これを遂行しなければ、駅に掲げている理念もタダの額縁となるのでしょう。

JR西日本では、列車の遅れにとても敏感です。特に東海道本線については、「阪急」「阪神」「京阪」の3社と戦うことになり、特にそうです。
例えば、塚口から京都に行くとして、いく方法は2種類考えられます。一つ目は阪急の塚口で乗車して十三で乗り換えし京都へ行く方法です。もうひとつは、JRの塚口駅で乗車し、尼崎駅で乗り換えし、京都へ行く方法です。
この際、尼崎駅に延着してしまい、乗客が新快速に乗り遅れると、到達時刻は阪急と変わらない場合があります。ただでさえ、「速さ」で売っているJRとしては遅れは何があっても抑えるべきであり、特に尼崎駅連絡は核となることから敏感になるのです。
そういえば、数年前に救急隊員を死傷させた事故の現場も尼崎駅の近くです。

そんなことがありながらも、安全を犠牲にしながら、今日もスピードアップに励みます。
ところで、JR西日本では、1分以上の延着は減俸の対象です。その歯車のハザマで自殺する人も多いと聞きます。
以下のページは、JR総連の主張です。労組なので、100%信用してみることは危険ですが、ココだけでなく、良く聞く話です。
http://www.jr-souren.com/statemnt/tusin492.htm
運転手を攻める意見も多く、なぜ「オーバーランをしてしまった運転手を乗務させているのだ」という意見がありますが、これは筋違いで責めるべきは無理なダイヤを遂行しなければならない環境を作る会社側で、先頭車両に乗車し、運転手が速度制限を舐めるように走る様子を見ていると、とてつもないプレッシャーを受けているように思うことがあります。

ところで、今後も私はJRのほうが速いので、選択してしまうでしょう。
例えば、大阪から明石まで、JRなら30分ですが山陽電鉄なら1時間かかります。それも料金はJRの方が安いくらいです。宝塚にしてもそうです。阪急は特急が出来てもなお遅い。全く話になりません。

今日も、安全と引き換えに、利益を追求するJR西日本があります。今回のことを機に、本当に変われるかどうかが問われます。体質の改善なくしては、現場だけに災害の原因をなすりつけ、延々と事故を起こし続けることになるでしょう。やはり事故の原因は体質であると思われます。
次があるとすれば、私もさすがに選択の余地はありません。