中国でサーバーやデータセンターを借りるということ

今回、インプレス社から発行されている「インターネットデータセンター完全ガイド」の特集2、「中国iDC&ネットビジネス事情」に記事を執筆しました。もう発売されていると思いますので、機会があればぜひご覧下さい。

最近になって、中国でのインターネットに対する検閲について、日本でも知られるようになりました。中国では、通信が全て監視され、政府の判断によって閲覧できるウェブサイトに制限がかかっており、中国からの国際回線において特定のサイトがブロックされることがあります。(不適切なサイトを閲覧すると、突然TCPのRSTパケットが飛んできて、中断させられることも・・)
また、日中間の回線には帯域の余量があまり無く、常に遅い状況が続き、10MBのファイルを転送するのに2時間も3時間も掛かることは決して珍しいことではありません。

以前であれば、中国に進出している日系企業の多くが「工場」として中国を見ていたため、このような制限もさほど問題視されませんでしたが、サービス業を初めとした「市場」としての中国の見方が増えるにつれ、このインターネットの接続性の問題がビジネスに悪い影響を与え始めました。
中国に居られる日本人の方々も、最初はホスティング会社やISPへクレームをつけるわけですが、最終的にはどうしようもないことが起きているのだと認識します。だから、みんなそんなものなんだろうと、妙な納得をしてしまっているのが実情といえるでしょう。

しかし、日本人が中国から日本へ遅い分には我慢できますが、中国人が中国から日本のホームページをみて「遅い」ということになれば、それが企業のホームページであった場合に、大きな損失となります。
例えば、中国人が日本へ旅行しようと「日本旅游」と検索したとして、出てきたサイトがとてつもなく遅かったとするなら、別のページに行こうとするでしょう。
日本では、2秒サイトが開かなければ別のページに行くとも言われますが、中国においてもなかなか出ないページより、直ぐに出るページに行ってしまうのは当然のことです。
ましてや、そのサイトは日本側が知らない間に、中国からブロックされているかもしれません。事実、中国に批判的な読売新聞はしばしば特定の記事にアクセスできなかったり、でも朝日新聞にはアクセスできたりということは、良くあることです。

ちなみに、中国では全てのウェブサイトを登録(ICP登録)しなければならず、登録が無ければサイトの閉鎖命令を受けることがあります。また登録をしている場合には、不適切なサイトがあった際に、事業者が公安などから指導を受けることになります。
逆に日本にサイトを設置している場合には、中国の法律の適用外ですから、このような命令や指導は来ませんが、一方的に中国からのアクセスが封鎖されてしまい、そのホームページは中国から消されることになります。そのホームページが中国に向けた情報発信をしていたとするならば、事実上閉鎖されたと同じ状況となるわけです。

このように、中国大陸の人々へ情報発信をしたければ日本から発信するということは、大変リスクのあることといえます。例えば、大阪市の中文版ウェブサイトも、日本にサーバーがある限り、いつアクセスが出来なくなるか、わからないわけです。


最近になってGoogleは中国国内にサーバーを設置し、下部に「京ICP証050124号」と掲示するようになった
その為、最近では国際回線を経由しない中国国内にサーバーを設置して、ウェブサイト・ホームページを開設することを検討する企業が増え、ICP登録ももちろん行うようになってきました。 こうすれば、アクセスがブロックされることもありませんし、もし誤って不適切と判断されるコンテンツを設置しても、公安からの連絡によりその部分だけアクセス制限をして済ませられます。 また、以前では中国にサーバーを設置していて押収された話も多かったのですが、最近ではICP登録の制度がかなり整備され、きっちりと管理している事業者を利用すれば、該当コンテンツを排除するだけでよくなります。

ところで、このような対策をしても悪意を持った人が不適切なコンテンツを公開し続けることもあり、このようなことが続くと、結局はサーバーを押収されてしまうことになります。そのため、事業者はキーワードでマッチさせたり、人が確認したりして、不適切なコンテンツをつぶす作業を地道にやっています。これが、いわゆる事業者による検閲で、MSNやGoogleでもこの行為が行われており、米国の議会で物議をかもした事件に繋がっています。
しかし、このようなことを行わない限り、サーバーを押収される現状が目の前にある中国においては、これも致し方ない状況なのでしょう。きっとやっていない事業者は、よほどずぼらか、人権家なんだろうと思いますが、そのうちサーバーは押収されて無くなってしまいます。厳しい現状です。

中国に行くと、日本には無いルールがたくさんあります。
中国に向けて情報発信を行う場合に、中国でサーバーやデータセンターを借りるということは、重要なことです。でも最も重要なことは、その現状を正しく理解しどこにリスクが潜んでるかを判断し、決してチャイナリスクという言葉で失敗を取り繕わないことだと思います。

コマーシャル
さまざまな中国におけるインターネットに関するリスクの分析に、さくらインターネットは協力します。 また、日本の事業者の方に向けた、私たちのノウハウを共有していただけるような、さまざまな提携プログラムも用意していますので、ぜひお声掛け下さい。
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