ITエンジニアの幸せな未来とは?

久しぶりの更新となりました。

先日、横浜大さん橋で開催されたCROSS 2015において、「今こそ語るエンジニアの幸せな未来」と題してセッションをさせていただきました。
私はセッションオーナーとしてモデレーターをさせていただき、スピーカーには「Asakusa Framework」の開発を始めHadoop界隈でブイブイ言わせているノーチラステクノロジの神林さん(okachimachiorz1)と、fluentd界隈で有名なNorikra作者で且つ前日にLINEの退職エントリーでバズってた田籠さん(tagomoris)にお越し頂きました。
お二人のおかげで、一番の入場者数と、一番の満足度だったようで、本当にありがとうござます。

内容に関する会場からのツイートに関しては にまとめています。

で、セッションの結論を要約すると、
どんな会社でもつぶれるんだから、勉強せんといかんよ!
というものでした。

今回のセッションにあわせて事前打ち合わせはしたんですが、基本的に内容は一切決めず、以下の3点だけは意識してやろうということになりました。

  • エンジニアの幸せと人生の幸せとの関係
  • 働きやすさと働きがいの関係
  • tagomoris氏の転職先

特に3点目は会場の皆さんの関心事だったのではないかと ;-)

ちなみに、今回の投稿はレポートではなくて、私の感じたことをつらつらと書いているだけなので、会場で話されたことは にてご確認ください。`
また、YouTubeでも公開されています。

ITエンジニアの幸せって?

突然ですが、ITエンジニアの幸せって何ですか?って質問されたらなんと答えますか?
給与が高いことという人もいれば、家族と楽しく過ごせるという人もいるでしょう。
また、毎日コードを書いていられればいいという人もいれば、サーバーさえ触っていればいいという人だっていますし、「プログラマは人生だ!」といって独身を貫いている人もたくさん知っています。
しかし、幸せって言うのは切り口が多すぎて、いまいちつかみどころのないもののように感じられます。

そこでちょっと整理してみると、ITエンジニアとしての切り口と、プライベートの充実といった切り口、そしてその全てという切り口など、色々見えてきます。。

  • 会社のこと
    • ITエンジニア的なこと
    • ITエンジニア的なこと
  • プライベートのこと
    • ITエンジニア的なこと
    • ITエンジニア的なこと(a.k.a. 家族・趣味 etc...)

ITエンジニアの幸せということを人生そのものにした場合には恐らく上記の全てになるでしょうし、人によってはITエンジニアとしての楽しみは別にどうでも良くて、給与を稼ぎプライベートを充実させるための手段という人も居るでしょう。
また、プログラマは人生だということであれば、会社とプライベートというのは特に垣根なく、とにかくITエンジニア的なことに時間を使いたいということになるのではないでしょうか。
もちろん、ITエンジニア的なことだけだった人が、結婚して子供が出来て、仕事も家庭も充実させようと言った価値観に変わる人だっています。
このように、ITエンジニアであるということを手段ととらえるのか、目的ととらえるのかによって異なると思いますが、ITエンジニアとして仕事が充実し、家族をはじめとした人生そのものも充実するというのが、理想的には一番の幸せであるのは間違いないと思えます。

ちなみに、はっきりさせないといけないのは、幸せと不幸せは同じ軸には無いということです。
ハーズバーグの二要因理論によると、満足につながる「動機づけ要因」と、不満足につながる「衛生要因」の2つの要因に分かれ、「不満足な状態」が改善したとしても「不満足が無い状態」になるだけで、「満足な状態」になるわけではないと言われています。
幸せの話に適用すると、「不幸せな状況」が改善しても「不幸せじゃない状況」になるだけで、「幸せな状況」にはならないということであり、幸せになるという因子は不幸せの改善では変化しないということです。

働きやすさと働きがい

今回のセッションで話をするにあたって重視したのは、「働きやすさ」と「働きがい」は違うんだよというところでした。
「幸せ」と「不幸せ」の話と同じく、「働きやすさ」が改善したからといって「働きがい」が産まれるわけではないという話です。
そして、幸せの因子は働きがいの因子に関連し、不幸せの因子は働きやすさに関連すると言ってよいかと思いますので、それを軸に見ていきます。

下のスライドは、オレンジ色が働きやすさの因子で、青色が働きがいの因子です。
ものによっては、どちらかわからないものもありますが、とりあえずまとめてみました。

働きやすさと働きがい

給与が低かったり、休みが取れなかったりすると、働きやすさが低いということになりますが、必ずしも働きがいが失われるわけではありません。
例えば、スタートアップで働く場合や自ら起業した場合には、働きやすさという項目は低くなるかもしれませんが、働きがいはあることが多いと思います。
逆に、給与が高かったり、休みが取れたり、昼御飯がタダだったりしても、変わり映えのない仕事であれば働きがいを感じないケースは多いでしょう。

ちなみに、飲食業やITの請け負いなどの労働集約的な職場環境においては、働きやすさ(例えば給与や休暇などの待遇改善)を改善することがビジネスの仕組み上難しいケースも散見され、しばしばブラックと呼ばれる状況に繋がります。
そのような場合の求人においては、とにかく働きがいを強調しがちであり、例えば「アットホームな、働きがいのある職場です」という文章のように、アットホームという会社が証明しなくて良い働きやすさと、「働きがい」という働きやすさではない言葉に置き換えるわけです。
後でも述べますが、働きがいは与えてもらうものではなく自分で見出していくものであり、働きがいの因子である「夢」「成長できる」「チャレンジできる」「
お客さまから喜んでもらえる」などを会社から押し付けられるのは、少々筋違いというものです。

転職に至る理由

話を働きがいに戻しますが、スーパーエンジニアがなぜか好待遇を捨ててベンチャー企業を興したり、Joinしたりするケースが見られます。
例えば、元はてなの伊藤直也氏や、3月末でADSJ(AWS)を退職する玉川憲氏など、恐らくは好待遇であり働きやすさは充実していたと思える人が、また外から見ると働きがいを感じていたと思う人が、転職していくわけです。

今回登壇していた@tagomoris氏もLINE株式会社では恐らく良い待遇だったでしょうから働きやすさは満ち足りていたと思いますし、ご本人も何か不満があったわけではないとおっしゃっていました。
私が感じたのは、ある程度の働きやすさを得た人にとっては、働きやすさというのはさほど重要な要素になっていないのではないかということです。
そして働きがいが重要になっているのではないかなということです。
ちなみに、働きがいはいつまでたっても要求が止まらない麻薬のようなもので、さらなる刺激を求める傾向があるため、いつまでも満足しないものなのだとも感じました。
このようなケースにおいては、不満足な状態ではない(働きやすさは得られている)けれども、満足が少なくなってきた(働きがいが増えない)と言い変えられるかもしれません。

多くの転職では、給与の高い職場とか、実家に近い職場とか、休みの取りやすい職場、といったように、働きやすさの改善を求める場合が多いと思いますが、上記のように働きがいに満足感が無くなってきて転職する人もいます。
例えば@tagomoris氏の転職はそうだと見ていて、セッションの中でも「同じところだと飽きる」という話をされていたので、さらなる働きがいを求めてのことだったのだと思います
このようなことなので、給与いっぱいだすよーとか、フレックスだよーと勧誘するより、刺激がある仕事などやりがいのありそうな仕事でオファーを出せば、氏を射止めることも出来るかもしれません ;-)

余談ですが、セッション内で面白かったのが、いざ会社を辞めると言うと「給与が不足してるの?」「もっとチャレンジできる仕事あるよ」と上司から慰留をされるわけですが、なぜ退職を決断する前にそれを用意してくれないんだ、という話を良く聞くねということでした。
日頃から目を配って、業務以外の話をちゃんとしておかないとと、耳の痛い話でした。

会社ができること

給与が多くて休みが取れる環境ほど働きやすい職場だと思いますが、働きやすくなったからといって働きがいが自動的に生まれるわけではありません
とはいえ、先に述べたとおり、ある程度の働きやすさが担保された上での働きがいだともいえます。
働きがいは会社が直接与えられるものではないのですが、働きにくい環境において働きがいを見いだせと言っても無理な相談です。

最近色んな人と話をしていて思うのが、最低限500万円~600万円くらいの年収、ないしは年齢×15倍くらいの年収があれば年収自身に関する不満は少なくなる傾向にあるということです。
また、正社員であるとか、休みがとれるとかといったものも、不満を無くすために重要な因子です。
このような「衛生要因」を改善するためには、正規雇用をして、ある程度の年収を担保して、そこそこの事務所を用意して、休みが取りやすい環境(人員の余裕を含む)という働きやすさの因子を改善し、結果として「働きにくくない」状況を作り上げるということが重要です。
その先に、「動機づけ要因」である働きがいの話が出来る環境がやってくるのだろうと思っています。

なお繰り返しになりますが、スタートアップなどで待遇が良くないけどすごく働きがいがある!みたいなケースは実際にありますし、それは素晴らしいことです。
ただ、ある程度大きくなった会社において働きがいについての議論をするためには、ある程度の働きやすさを保障してからでないと、ということを言いたいわけです。

結局どのようにすれば良いのか

正直なところ、このセッションにおいては幸せになる秘訣など出ませんでしたが、働きがいや生きがいといった、幸せを増すための因子を改善できる環境に、身を置けるようになることが重要なのかなと感じました。
それならどのように立ち回ればいいんだ?という話になるわけですが、ここまで長々と話をしてきて恐縮ですが、とにかく勉強を続けて、いつでも転職できるくらいの人材にならないと行けない、というごく当たり前のことがセッションの結論でした。
この次のセッションでGoogleの及川さんが仰ってたように、日々自分の市場価値を意識する必要があるということだと思います。
また、どんな会社でも潰れるリスクがあり、意図せずほおりだされて、次の働きやすさを得られない状況にならないためにも、転職可能な人材で居続けられるということは重要です。

そして会社への提言をするならば、やはり社員が働きやすい状況を作り上げると言う義務を果たし、働きがいについて社員自身が考えられる状況を作り上げると言うことです。
正直なところ、働きがいを会社が与えることはできませんが、働きがいを考えるきっかけを与えたり、働きがいを引き出す努力は続けるべきです。
また、会社や上司は働きがいを奪うことは出来るので、そうならないように気をつけると言うことも重要でしょう。

まとめると

  • 常に勉強して、働きやすい環境を得られる人材になる
  • 働きやすさを得て、働きがいを満たし、生きがいも満たすことで幸せになる
  • 働きやすさは会社が与えることができ、そのうえで働きがいを考えるきっかけを用意する
  • 働きがいは自分で見つけるもの。ただし働きがいを会社が引き出すことは出来る
  • 会社や上司は働きがいを奪うことをしない

みたいな話でした。

なお、色々と生意気なことを書いたわけですが、さくらインターネット自体が働きがいの高い会社に出来ているかというと、まだまだ道半ばだと思います。
実際に派遣社員の直接雇用化や、契約社員の正社員化、3年で2割の平均給与アップという目標の設定
など、ようやく働きやすさについて本格的に動き始めたところです。
そして、3年以内には全てのことを解決したいと決意を新たにしたところです。

最後になりましたが、ITエンジニア自身が常に勉強をして、また会社がちゃんとした働きやすさを用意し、働きがいを持ってみんなが仕事を出来るIT業界になれば、ITエンジニアの幸せな未来がやってくるのだろうと感じており、それに自分自身もコミットしていきたいと思います。
うまくまとめられたかどうか不安ではありますが、ここまでお読み頂いたこと感謝いたします。