スパコンなんて要らないよ

何かと話題の事業仕訳。
蓮舫が「(コンピューター性能で)世界一を目指す理由は何か。2位ではだめなのか」などと発言して、かなりのひんしゅくを買っているのはみなさんご存じのとおりです。


しかし、本当に今回のスパコンは必要なのか?


正直なところ、今回のスパコンなんて無くても、大して困りません。
一度予算をカットされて、頭を冷やしたほうが良いでしょう。

今となっては、グラフィックボードのGPUを活用して演算ができる時代です。
今回のスパコンで利用する予定のsparcチップがどれだけ素晴らしかったとしても、そこそこの性能が出るIntel Xeonなどを活用した計測計算機作りをするほうが、産業の広がりがあるというものです。(NECはIntelと共同で、ベクトル演算拡張をCPUに入れる研究をしているそうですし)
本当に、1からCPUを設計し、世界中のエンジニアの度肝を抜くようなプロジェクトでない限り、大量の予算をつけるのは無駄です。


ちなみに、既存のチープなCPUやGPUでスパコンづくりをしているプロジェクトは山ほどあります。
スパコン開発で「ゴードン・ベル賞」 長崎大助教ら受賞 「国内最速」安価で実現
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/136999

昨年の話ですが、Sonyや東芝が開発した和製のCellを利用したIBMのスパコンもあります。
IBMのスーパーコンピュータ、1ペタFLOPSを達成--PS3のCellを使用
http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000056022,20375049,00.htm


ちなみに、IBMはPOWER7で10PFlopsを目指すそうです。これは、今回のスパコンプロジェクトの目標値と同じです。
ハッキリ言って、1位になれないのが分かっているプロジェクトに意味はありません。
1位かそれ以外。スパコンの世界はその2つしかありません。
2位ではだめなのです。
オンリーワンではなく、ナンバーワンでなければならないのです。

それらの活動を通じて、研究者・技術者が世代のバトンタッチをし、いつまでも日本がスパコンで認められる国にならなければなりません。


今後、草の根で起こり始めている国内のスパコンプロジェクトをよく吟味し、気合いを入れてプロジェクトを立て直し、国税をたっぷりとつぎ込んで日本の真価を世界に知らしめること。この方向性を、政治家、科学者、官僚がしっかりと握り、世界に冠たる科学技術大国になってほしいと心から願います。

結局、スパコンプロジェクトはかなり「怪しい」「妖しい」ものであるのは否定できません。
その上で、今回の問題はスパコンが否定されたことではなくて、「1番でなくてもいい」「科学技術予算が投資ではなくコスト」という言葉が国民の代表から発せられたことが、一番憂うべき事態だと思うわけです。

日本が技術以外、何で生きていくというのでしょうか・・・。

私がやりきれないのは、科学立国で生きているくせに、それの重要性を理解しようとすらしない、政治家たちの貧困さなのです。


P.S.
日本の研究者の方で、HPCの研究をしたいという方がおられれば、ぜひ共同研究をしましょう。
データセンターファシリティとサーバであれば提供できます。
できれば、チープなマシンを何千台も並べて、ひとつのコンピューティングリソースとして共用できるプロセッシングファームを作りたいと思っていますから。
いつか、スパコンは「スーパーコンピューター」から「スーパーコンピューティングファーム」となって、もっとたくさんの人が恩恵に与かれる日が来ることを願っています。

コメント(8)

匿名

一位を取ろうとしなければ二位なんて無理です。
GPUを並列にして地球シミュレーターを凌駕したという記事がありますが、僅かに上回った程度、それも万能ではなく精度も低いそうです。
数百億円の予算というものは、現状の様なコンピューターでは限界がみえており、量子や、光子コンピューターの開発に用いられるのではないでしょうか。
ここで予算をカットしてしまっては、技術大国の名を譲る事になり、ひいては発展途上国に逆戻りするのではないでしょうか。

たなか@さくら

>匿名さん江
全くもってその通りだと思います。
私はスパコンを否定しているのではなく、”今回の”スパコンは要らない言ってるだけでございます。
ベクトル演算をすぐにGPGPUに置き換えて精度が出るのかと言われれば、それは否なわけですし、スパコン不要というわけではありません。

匿名希望の科学者

京速計算機のこともスパコンのことも本当に理解している人がほとんどいないのが大変残念です。

市販のCPUとGPUをたくさん買ってきてInfiniBandでつなげばLINPACKで10PFLOPS出せるかもしれません。でも、そんなものは本当にスパコンを必要としている人の役には立ちません。

さまざまな分野の計算で10PFLOPSを発揮でき、10PFLOPSですら何日も掛かるような計算を破綻なく実行できるスパコンは、そんないんちきでは作れないのです。

TOP500のトップのJagurですら、障害発生時に安全に縮退して計算を継続することはできず破綻します。

今回の京速スパコンの1100億円は建物などにかなりお金を取られていて、ほとんど富士通の持ち出しで作られます。

新しいCPUを一つ設計製造するコストが1100億円ですむわけがありません。IntelやAMDが毎年R&Dにいくら使っているかか考えればすぐわかることです。

京速計算機のCPUであるSPARC64 VIII fxは、非常に強力なSIMD命令とハードウェアバリアというコア間の同期機構を備えた、そこそこ画期的なCPUです。このCPUはレジスタにまでECCがありエラー検出・回復が可能です。この手の技術は富士通のお家芸です。

京速計算機では、富士通が新たに開発した光インターコネクトが用いられます。InfiniBandのようなおもちゃではありません。確かにお金は掛かりますが、インターコネクトのレイテンシが小さく帯域が大きくなると、システム全体の実効性能は確実に上がります。

OSやコンパイラがどれほどのものかわからないので、まだなんともいえません。新しいCPUとインターコネクトなので、性能が出るまで少し時間が掛かるかもしれません。

ひょっとするとTOP500ではトップになれないかもしれません。それでも今回作られるスパコンは作る価値のある本物のスパコンです。

政治的な迷走があったので印象が悪いのですが、最終的にはそれほど悪くないところに落ち着いたのです。あとは「今回のスパコンはいらない」などと邪魔をせずに完成させてあげるだけです。

さくらユーザ

スパコンを巡る議論ですが、
不要派は
A:「スパコンなんてそもそも必要ないよ」
B:「今回のスパコンは必要ないよ」
必要派は
C:「スパコンは基礎研究だからそもそも必要だよ」
と言う意見があって、仕分け人は恐らくA、世間はC、事情通はBで主張がかみ合わずチグハグしている印象を受けます。
BでありかつCと言う意見の方はたくさんいると思うのですが(田中さんも恐らくそうですよね)、何故かBとCが意見を戦わせています。この不毛な方向へ発展させた仕分け人やマスメディアの方々には大きな責任があると思います。

ねこみみ

大方同意です。
スパコンを作る事がどれくらい重要度があるかについては私では計りきれませんが、
全く新しい新技術開発への投資って政府は非常に少ないですよね。
一つうまく行けば10年先までシェアをにぎり続けれるような、そういうロングスパンの技術開発ってのは政府を除いたら、トヨタみたいな十分な力を持ってる会社か大学くらいしか無いのに、
そういう投資ってむしろ減らされようとしてますもんね

KJ

タイトルからスパコン全てが必要ないのかと思いました

GPUを使った演算処理は単純な計算の連続には強いですが
複雑な演算には強くありません。

新薬開発、DNA解析などの高度な計算にはやはりCPUが必要です。いつまでも日本がスパコンで認められる国であるならば、インテル製のものを使って産業の広がりを目指すのではなく、独自のCPUで日本の技術力をアピールするのが筋ではないですか?

匿名

まあでも、たとえ結果が世界一になれなくともそこに至るまでの経緯は決して無駄にはならないと思います。
創意工夫の中で思いがけない副産物的な技術が生まれ、それがまったく違う分野で役立ったりする例なんていくらでもあるわけですから。
それにこういうことって例え短い間でも止めてしまったら致命傷になったりするんですよね。
研究者が流れてしまったり関連企業なりが他と手を結んだり・・・。

ただ無駄な中間搾取もあると思います。
例えば朝、施設の鍵を開けるだけで年収1000万超えるような無能な人材を雇ってたりとか。
仕分けするならそういう無駄を省いて欲しいですね。

匿名

中間搾取や無駄遣いだけを削ればいいのに、予算その物を削ろうとしているのが問題だと思います。

その癖外国にはポンと数千億・・・
頑張った人間が報われない国になりつつありますよね。。。