脱線するほどのカーブの理由

la3751氏より、ダイヤは過密ではないに対するコメントにて、「現場のカーブなどはかえって急カーブとなったなどとも聞きますが、どうしてなのでしょうか」とのご質問を頂きました。
4/25の列車事故において記述していたカーブの付け替えについて、朝日新聞や毎日新聞などのマスコミでも取り上げられ始めましたが、その理由についてはそれほど言及されていない状況です。その為、今回はカーブがなぜ作られたかと言う観点で話をして見ます。

まず、上の図を見てください。現在の尼崎駅構内配線図と、福知山線のアプローチをまとめたものです。
福知山線がJR東西線との相互乗り入れを行う1997年より前は、宝塚方面からの列車全てが、大阪行きとなっていました。そして、尼崎−大阪間は東海道本線の新快速と同様に、外側線を走行していました。

東海道本線の西明石−草津間は、方向別複々線であり、外側線を特急列車や新快速列車など高速な列車が、内側線を快速列車や普通列車など低速の列車が走行します。 神戸以遠は、外側線と内側線が交互になるため、高速側を列車線、低速側を電車線とも呼称します。

しかし、1997年から福知山線とJR東西線の相互乗り入れが開始するとともに、大阪以遠への直通列車も設定されることになります。例えば、宝塚発京都行の普通列車なども多数生まれました。
そのことから、JR東西線や東海道本線の内側線に、外側線を平面交差せずに発着する必要が発生することになります。ダイヤは過密ではないの記事でも紹介したとおり、同方向の3線をフルに使って朝のダイヤをさばいている状況では、外側線を占有して尼崎駅に進入することは、出来ないことをお分かりいただけるのでは、ないでしょうか。
とはいえ、上図において点線で示した旧線を、東海道本線と立体交差する形にすると、合流点と尼崎駅が近すぎて、地上にホームを作ることは出来ません。1Fと2Fにホームを作るのは大変コストがかかりますし、乗り換えも不便です。その為、旧線の合流点よりもっと神戸よりに立体交差を作らなければならなくなったのです。

これにより、宝塚方面から尼崎駅への上り線は、今回の事故現場で大きく西にカーブすることになりました。これが、今回の事故を発生させたカーブが作られることになる真相です。
もちろん、この付け替えが全て悪いとはいえません。

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明日は明日のホラを吹く-Tomorrow, I'll give you another big talk- - JRの登場により競争が激化した私鉄の元運転士の息子として (2005年5月 5日 00:07)

私の父は私鉄の元運転士であり自分で起こしたことはないが生死にかかわる事件には何度か遭遇している。 ヒントである。小田急にロマンスカーという車両があるが、 1970年頃だったか父の会社でこれと似た形の特急電車ができてブルーリボン賞という 続きを読む

高千穂遥さんのウェブサイトで紹介されていたたなか@さくらインターネットというブログ。 鉄道に超詳しい人が、事故の背景をマスコミよりずっとつっこんで描いていてすごいなとおもった。そして「マニアって凄い」って感じのタイトルにしようとおもっていて、ブログに... 続きを読む

コメント(12)

Cun

ご訪問ありがとうございます。

わたしはてっきりあの工場(今のマンション)を用地買収するものばかりと思っていましたが。。。。

でも現実的な話、R300で運行させ、制限速度を守るためには、、、
名神高速道路のところから黄色と白との板をマンションのあたりまで立てかけておく。

そうすれば、運転士もここは120キロではだめなんだと自然にカーブの直前にスピードを落とす。「運転士の心理に対する」配慮すべきで。。。
高速道路では当たり前なことなんですが。
そうしないと曲線に何台も車の衝突事故が起きるから。
黄色と白の板を立てることぐらい安いお金でできるのですから。


「列車線」時代は外側は貨物専用で「大鉄局」の管理ではないため「新快速」が1970年前半より内側を走っており、分割民営化直前「新快速」が外側を走ったと、喜んでいましたから。。
(新快速の車体も実は山陽新幹線開通で余った岡山方面行き153系の元急行電車が当てられた)
(新快速も153−117−221ー223と四回の変遷があります。)
ついこの間まで、福知山線の普通は塚本駅通過という現実を考えても福知山線複線化は避けられなかったと思います。

それに天王寺の話で付け加えますと現行の19mの車体では、R60までカーブ可能なのです。もっとも40キロ以下の速度ですが。。

la3751

わざわざブログに新しい記事を更新し、さらに配線図まで作成して頂いたようでありがとうございます。外側線にのみ
進入可能だった福知山線を、東西線や内側線に乗り入れ可能にするためにカーブの付け替えをやったのですね。
新聞ではほとんど書かれず、ネット上では時間短縮のためという憶測まで流れていたので、何のためにカーブが急に
なるようなことをしたのかなと思ったものですから。
これで謎が氷解しました。ありがとうございました。また、訪問させて頂きます。

たなか@さくらインターネット

Cunさん
確かに仰るとおりです。
高速道路の場合などは、運転者の心理に合わせて看板の配置や色を工夫したり、時には路線の形を変えたりします。
列車の場合は、自動車よりプロフェッショナル化された運転士が運転を行うという考えがあったと思われますが、やはりエラーを予見しながら設備を構築していくことの重要性がひしひしと伝わります。

terutell

たなか@さくらインターネットさま。
2ちゃんねるでこちらのブログを知り、早くから的確な分析をされていたことに感服致しました。
私のブログでもリンク致しました。
私は数年前からの福知山線沿線の住民ですが、中山寺駅に停車するようになった時、正直、家に帰るのが遅くなるのが嫌だな、と思ったのです。ところが遅くはならなかった。以前どおり目当ての駅からバスに乗り換えることができた。
でもほんとうは電車が駅に着くのが遅くなるのがあたりまえで、バスとの乗り継ぎはまたバスのほうで時刻表を変えて調整してくれればよかったのですね。
それにしても便利さを限りなく追い求めてしまうことも問題なんだな……と思います。

クリス_NK

なるほど…尼崎駅の配線はこうなっていたのですね。
道理で事故が起こりやすいわけです。
このような配線では乗る方も運転する方も
紛らわしいでしょうし、安全管理に関しても
問題が起こって当然なのかもしれません。

私のサイトでこちらの配線図を解説に用いたいのですが、
構わないでしょうか?

GODFOOT

独自に脱線事故シミュレーションを行い、事故原因を調査した。

http://homepage1.nifty.com/gfk/densya_dassen.htm

 重心が固定された剛体モデルでの計算では、
電車は時速120Kmで片輪走行となり、片輪走行が始まると必ず転覆する。

電車の重心位置が転覆するかどうかを決定する。
乗客の重量、網棚の荷物で重心が高くなり、不安定となる。
また、電車は乗りごこちを良くするため、車輪、台車、本体を柔らかなバネで連結されている。
走行時の横揺れ、遠心力により電車は変形し、重心はカーブの外側方向に移動する。

重心が外側方向に10cm程度移動した時、電車は時速108Kmで転覆する。

外側方向10cmの重心移動は乗客100人の内側方向50cm移動すれば相殺できる程度の量です。
 乗客100人全員がカーブ内側に移動すれば、ぎりぎり、転倒を防げたかもしれません。

このページを見て新たに発見したことがあります。

尼崎駅ではカーブ外側のドアーから降りることです。
東海道本線への乗り換え客はカーブ外側のドアー付近に集中し、電車重心に影響をあたえ、転覆を加速させた可能性もある。

GODFOOT

追記

私もウェブでここの配線図を使って説明したいのですが、使ってもよろしいでしょうか。

たなか@さくらインターネット

GODFOOTさん:
なるほど。
不確定とせざる得ない情報も多いですが、説得力のある説明です。
少し前、地下鉄御堂筋線で列車とホームの間に人が挟まれましたが、乗客全員がホームと反対側に寄って、ホーム側から客が押して、隙間を作り助けたという話がありました。
ボルスタレス台車になり、列車もかなりふわふわした状態なので、どこに乗客の荷重中心があったかということだけで、結果は異なっていたのかも知れませんね。

ところで、配線図は出展さえ示していただければ、ご自由に利用いただいて結構です。

GODFOOT

確かに、乗客が偏って乗っているかどうかは不確定要素です。
(再開した電車に乗って確認したい)

電車はかなりやわらかいため、力により変形し、重心位置が移動します。

転覆の原因のほとんどは遠心力、走行振動による重心移動と判断しています。

高さ方向の重心移動と比較して、水平方向の重心移動量の転覆速度に対する影響は大きい。

ジャイアニズム

なるほど…私の意見と全く同じです。

福知山線・東海道線のダイヤで注目すべきは尼崎で神戸方面からの列車と宝塚方面からの列車が相互に接続し、さらにそれぞれの列車が東西線系統と東海道線系統に分かれるというものであり、非常に利便性が高く、これは机上の論理としては最高のダイヤと言えるでしょう。
しかし、あくまでも机上の論理であり、実際にこのダイヤが守られるかどうかは別です。
そもそもダイヤというものは生き物であり、柔軟性が必要なのです。例え運転に落ち度がなくともラッシュ、天気その他の要因により遅延が発生するということは当然のことなのです。一体何を考えてこんなダイヤを作ったのか…作成者は遅れというものを考えたことがないのかと邪推してしまいます。そりゃ机上で作成するだけなら遅延などありえないし、どんな不可能事も可能にできるでしょう。

JR西日本のダイヤには余裕時間の少なさという問題もありますが、、少なくともこの事故に関しては直接的な原因ではないと思います。むしろ接続であると言えるでしょう。このダイヤの問題は「尼崎の遅着は絶対に許されない」という点にあります。そもそもこの事故列車は伊丹出発時点で既に1分30秒遅れていました。しかし、次の停車駅である尼崎までは約5.8キロ、この区間で1分30秒の遅れを取り戻すというのは、どんなに余裕時間があっても不可能でしょう。可能であったらそれは余裕時間の取りすぎであって、ダイヤとして成り立ちますまい。

高度の教育を受けた人間が思い上がってエリートぶり、現場を軽侮してはその実情を無視し、机上の論理で物事を処断するため、矛盾が生ずるのです。今回も同じことが言えるのではないでしょうか?内勤の人間が現場の実情を省みず、机上の論理で無茶なダイヤを作り、それによる遅延という矛盾が発生するや「遅れを一秒単位で報告しろ」とは…
この現実軽視の問題は今の日本社会全体に共通するものではないでしょうか?いつぞやあった郵便番号7桁化も現場のことを知らない郵政官僚の机上論から生まれたものでした。今騒がれている大増税問題も御用学者や理論家の机上論であるといえないでしょうか?


ところでこの相互接続のダイヤですが、尼崎だけではないのです。
まず、福知山。http://www.jr-odekake.net/navi/index.php?id=bigx&area=4
ここはビックXネットワークといい、大阪方面からの特急と京都方面からの特急が相互に接続し、豊岡方面と丹後方面に振り分けられます。もっともこれは一時間に1本の特急だけであり、接続時間も多めに取っていますからそれほど問題はないかもしれません。
次に大和西大寺。
京都方面・難波方面から奈良方面・大和八木方面の組み合わせです。といっても難波から大和八木への列車はなく、また、それぞれすべてが接続しているわけではありません。ただし、大和西大寺の前後が平面交差になっているのがネックです。
その次、大宮。
湘南新宿ラインができてから規模が拡大しました。
高崎方面・宇都宮方面と新宿方面・上野方面の組み合わせです。ただし、接続は全くと言っていいほど考慮されていません。それもまたどうかと思いますが…
やはり運行系統を単純化するに越したことはないと思います。具体的には高崎と新宿、宇都宮と上野の組み合わせが自然でしょう。
そして…将来のことですが小竹向原です。
今はいいのですが、13号線が前線開通したときです。和光市方面・西武線方面と新木場方面・渋谷方面の組み合わせになるらしいです。設備は十分なのですが、第二の尼崎になるのでは…