地域IXは必要か?

このページを見てくれている皆さんは、もちろんインターネットを利用している事と思います。
そこで質問。インターネットって何ですか?

IT用語辞典によると、以下のようにかかれています。
「通信プロトコルTCP/IPを用いて全世界のネットワークを相互に接続した巨大なコンピュータネットワーク。」

んー、わかったようなわかんないような。とにかく、ネットワークが寄り集まってできた巨大なネットワークのことだということは、疑うべくも無いでしょう。ちなみに、ネットワークをインターネットに接続するにはどうしたら良いか・・。ISPに加入するのが早道です。では、ISPはどのようになっているかというと、上位のISP(一般的に一次プロバイダと呼ばれる)に接続するか、はたまたIX(インターネットエクスチェンジ)に接続することによりインターネットへの接続性を確保します。
ここで出てきたIX。通常IXというと、一つの交換装置(大きなスイッチングハブ)に各事業者が接続してトラフィックを交換するのですが、最近は広域IXというのもあります。しかし、今回は前者のみについて見てみます。



現在、ブロードバンド化が進み、世界で一番安く、高速回線が得られるといわれている日本。確かに、先進国の中で下から数えた方が早かったような国が、ここ数年で大きく変わりました。特に、ソフトバンク率いるYahoo!BBの躍進は、改めて解説するべくもありません。しかしながら、日本がこれだけ成長したのは、国土が狭く、商圏の大半が東京・名古屋・大阪など太平洋ベルト周辺に集中しており、ネットワークの規模が大きくならなかったことが重要であるということをわすれてはなりません。

確かに、各社とも試行錯誤を行い、拠点間の網構成を冗長化したりと、ネットワーク単位では信頼性向上を狙っていますが、ネットワーク間をつなぐIXの観点から見ると、現在80Gbps程度が東京で交換され、13Gbps程度が大阪で交換され、東京・大阪以外の全ての地域においては、全てを足しても数百Mbpsに過ぎません。つまりは、ネットワークが信頼性を向上しても、その交換のための施設が限定されるため、「日本のインターネット」が脆弱な基盤にあると考えています。

よく、インターネットは軍事目的で作られ、耐障害性・障害回避能力が高いといわれますが、現状の日本を考えると、「1事業者」や「1センター」の中での障害には強いものの、東京というマチが攻撃されると大阪のみでインターネットを支える状況になってしまうと言っても過言では在りません。そもそも、これだけブロードバンド化が進んだ現在、大阪ですら100%の品質を保証することは無理でしょう。そういった観点から「日本のインターネット」の信頼性向上を行うには、大阪のIXを強化したり、そもそも東京・大阪以外のIXを充実させたりということが検討され始めました。ただし、実際には検討だけしか行われなかったことが多く、大阪のIX機能一部強化(JPIX大阪の設置・JPNAP大阪の10Gbps対応)のみが実現されました。

なぜ、分散が必要だといわれながら分散ができないのでしょうか?
それは、コストだけの問題ではなかったのです。


昔、日本において商用インターネットが普及し始めた頃、一次プロバイダとは「海外(アメリカ)との回線を持っている」ということでした。つまり、当時は日本のインターネットとはアメリカのインターネットに接続するものとの考えが強く、事実コンテンツの多くは海外にありました。
インターネットを始めたばかりの人は、英語もわからないのに NASA のウェブサイトをみて、自慢しあったものです。

しかし、今は違います。世界有数のブロードバンド環境を手に入れた日本は、国内に閉じるトラフィックが多くなってきました。つまりは、海外から日本に流れるトラフィックがインターネットのトラフィックの大半を占める時代は、とうの昔に終わっています。
ここで重要になってくるのは、「インターネットとはあくまでもインフラである」ということで、コンテンツが無ければ成立しません。コンテンツとは、データセンターやISPにあるサーバに格納され、はたまたWinnyやWinMXのようにクライアントマシンに存在することもあります。そのコンテンツ自体が物理的にどこに存在するかということを考えなければなりません。

現在、私が観測した限りでは、50〜60%程度がHTTPやストリーミングといったトラフィック、30〜40%程度がWinnyやWinMXなどと考えられるP2Pトラフィック、そして全体の1割程度がメールやFTPといった、その他のトラフィックとなっています。そして、50〜60%程度を占めるHTTP等のトラフィックの大半は、東京にあるデータセンターから配信されています。30〜40%程度を占めるP2Pトラフィックは大都市圏に傾斜した形での地域分布で発生しています。

このことから判るのは、大半が関東近県と大都市圏からトラフィックが生成されているということで、つまりは「IXだけを地域においても、コンテンツが地域に無ければ、全く無意味」であるということです。

商用の地域IXは、これがわかっているから、政令指定都市以外には一つも作られませんでした。
なぜなら、コンテンツが生まれるわけも無く、生まれたとしてもせいぜい数百Mbps。P2Pぐらいしか地域内トラフィックはないでしょう。


とりあえず、商用のIXはこれ以上の検討を止めました。
しかし、行政は違います。地域IXを作るに際し、「地域情報の発信!」とか「行政サービスの向上」「地域の情報交換」などと、コンテンツを作ってIXを成功させようとしました。確かに、この道順は理にかなっています。
ただ、根本的な問題、前出のようなコンテンツはそれほど大規模になることは在りませんからトラフィックも伸びません。ましてや地域情報を大規模に全国に発信したいのなら、ターゲットの住んでいる東京や大阪などの都市圏にあるホスティング事業者に任せた方がよっぽどかマシです。

いまやフレッツ網が広域化され、東京と大阪の2拠点に集約できるようになりました。つまり、どこの地域でも大手ISPのサービスを等しく受けられるようになったということです。しかし、その様な大手ISPは地域IXなどには接続させてもらえないし、そもそも繋げようともしませんから、行政サービスといっても結局はトラフィックが東京廻りになります。
それこそ、地域IXに接続しているISPのユーザにのみ行政サービスを提供するのなら良いですが、その様なことは出来ません。

結局、行政が地域IXを作る目的はP2Pの速度向上なのか?ということになります。
ましてや、秋田IXのようにISPに逃げられたら全くの無意味です。そもそも、東京ありきで設計した秋田IXは冗長性において全く意味を持たないし、IPサービスで考えても東京で「高品質・低価格競争」などにより鍛えられた都市部のISPのIPサービスの方が断然信頼性が高くて安くあがるでしょう。

ほか、岡山県のようにIXといっても通信インフラのレンタルが中心になった例もあります。このアプローチは既に地域IXと呼ぶのは反則ではないかと考えています。しかし秋田のように失敗したものではありません。なぜなら、点ではなく線で構築し、県内の事業者に等しく岡山市内までのインフラを提供することによりレイヤの低いところを行政で、L2以上のレイヤが高い部分は事業者で分担することができたからです。

結論としては、地域IXはトラフィックが見込めないし大手ISPが接続しないことから、どうしても収益性が乏しくなるでしょう。また、その収益性をカバーするために付加価値を狙うとなると、事業者の邪魔です。
根本的なところ、行政は地域IXに目を向けるのではなく、県内にNTTダーク以外の光ファイバの選択肢を提供するなどの、最低位のインフラ整備に目を向けてもらいものだと考えています。

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僕がmetro engineなんてのを考えたのもトラフィックの集中が顕著だからなのですが、トラフィック交換の多くを担ってきたIXが集中しているというのは大きいわけです。 しかし最近は行政が地域にIXを!とかで地域IXをつくったりしているわけですが、それはほとんどうまく行... 続きを読む

コメント(2)

tss

しっかり頼むね > 江崎さんとか。ごぶさたです。
総務省が地域 IX への投資計画を再開するように読める記事が出ています。

http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=econ&NWID=2004120901002614 (共同通信)

どうやら

http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/041208_2.html (総務省)

これの関連のようです。官営地域 IX が日本道路公団の二の舞になる予感…。しっかり頼むね > 江崎さんとか。

tss

うう、微妙に編集狂った、、、。
江崎さんを二回も呼んでもなぁ :-)。